配属希望の学生へ Applicants

本研究室では、単結晶育成をキーワードに酸化物単結晶育成で世界をリードする研究拠点として、高温超伝導体をはじめとした様々な酸化物の高品質単結晶の育成を行っています。また、物質に応じてより適切な単結晶育成方法の開発を行っています。主な研究課題を以下に記します。

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研究課題:

(1) TSFZ法による酸化物高温超伝導体の高品質大型単結晶の育成

 TSFZ法とは溶媒移動浮遊帯域法の略称です。この方法を用いて本研究部門では世界に先駆けてランタン系酸化物高温超伝導体の大型単結晶の育成に成功し、全世界から大きな注目を集めました。これは、超伝導機構解明、デバイス応用といった分野では、大型かつ高品質の単結晶が不可欠であるためです。現在本研究部門では、育成した単結晶を酸化剤などを用いて酸化させ、酸化条件の変化に伴う物性変化などを丹念に調べています。

(2) 酸化物高温超伝導体単結晶膜の液相エピタキシャル成長

  ランタン系酸化物超伝導体をはじめとした銅酸化物超伝導体には、超高速かつ超低消費電力で動作可能な演算素子としての応用が期待されています。つまり、現在の半導体デバイスの限界をこえ、今後のIT社会を根幹で支える材料として大いに期待されています。このデバイス応用を実現するためにプロセス上有望と考えられているのが液相エピタキシャル法による単結晶膜の作製です。本研究部門では高品質単結晶膜作成に取り組むことで超伝導素子の応用に貢献しようと努力しています。

(3)酸化物単結晶の育成形状制御

  単結晶を育成する場合には、より結晶成長しやすい方向とそうでな方向、すなわち、結晶成長速度に異方性が見られます。いくつかの銅酸化物超伝導体をはじめとした多くの酸化物ではこの結晶成長速度に顕著な異方性が見られるために育成結晶の形状が平板状になるものがあります。本研究部門では、単結晶育成時の温度分布を制御したり、帯域溶融法での育成時における溶融帯の安定化を図ることで育成結晶の大型化、形状制御を行うための方策を模索しています。

(4)酸化物単結晶の融液成長における強磁場効果

  酸化物超伝導体や金属系超伝導体に関係する材料技術や低温技術の飛躍的進歩により、容易に10T(テスラ)という強力な磁場を容易に利用できるようになりました。これまでは1~2T程度が通常の実験室レベルでは限界でした(ちなみにピップエレキバンの磁場は0.08T)。磁場の強さでは約10倍ですが、磁場のエネルギーを考えると運動エネルギーが速度の自乗に比例するのと同じく磁場の自乗に比例するので約100倍の違いに相当します。われわれは、そうした特殊な環境で単結晶成長を行った場合にどういった効果が現れるかを研究しています。

(5)透明イオン伝導体単結晶育成

  酸化物超伝導体以外にカルシア・アルミナ系酸化物に見られる透明イオン伝導体として性質に注目し、その単結晶育成に取り組み始めました。

研究室の方針:

 原則としてコアタイムを午前9時から午後5時までとしています。単結晶育成実験に従事する場合、長時間の継続的な観察及び実験操作が必要なる場合があり、その場合には徹夜実験が必要となります(もちろん毎日ではありません)。そのため、配属を希望するあるいは配属せざるを得ない学生はその点を必ず納得しておいて下さい。単結晶育成実験に成功した場合には非常にきれいな結晶が得られますが、一つ一つの実験操作をいい加減に行うとそれだけ得られる結晶も汚くなります。従って、丁寧な実験をできる学生であって欲しいと思います。また、よりよい単結晶育成を目指した研究では、実験中に絶えず、どのようにすればよりよい単結晶が得られるかを考え注意深く観察する意識を持ち、絶えず学生同士あるいは教員と議論しながら実験を進めることが必要になります。したがって、洞察力を高めよう、あるいは自分の意見をはっきり述べる力をつけようとする意識を持って欲しいと思っています。

 最後に「自分はどうせ○○だから……」といったたぐいのことばは、謙遜という多くの日本人にとって美徳とされるものでは決してなく、怠惰な自分を正当化しようとするむなしい言い訳だと思います。自分の置かれている環境の中で得られるチャンスを最大限生かして、少しでも自分を高めようとする崇高な意識を持って卒業研究だけでなく、就職活動など様々なことに取り組んで社会に出ても信頼される人間になっていって欲しいと思っています。