研究内容 Research

高温超伝導体や光学材料などの機能性酸化物は,単結晶化することにより結晶構造や形状に起因して新機能を発現します。本研究室では,種々の酸化物材料について結晶形状・組成・品質などを制御する新しい単結晶育成技術の開発や特殊環境下での結晶成長を行っています。

現在の主な研究テーマ

1. 赤外線集中加熱を用いた単結晶育成技術の開発

赤外線集中加熱法の工夫等によって従来の単結晶育成技術では量産が困難な単結晶材料の量産化を目指した結晶育成技術を開発しています。回転楕円鏡を傾斜させたり、移動させたりして、育成した結晶あるいは育成中の固液界面形状に対するその効果を調べたりしています。また、10Tの強磁場を印加した環境で結晶成長を行うための装置の設計・製作を行い、融液成長における強磁場効果を実験的に調べたりもしています。
傾斜鏡型赤外線集中加熱炉

傾斜鏡型赤外線集中加熱炉

 

2. 酸化物単結晶の新機能創製

新奇な高導電体や電極材料の単結晶を育成し精密な物性測定を行うことで、新機能性や機能性向上を図っています。具体的な例を以下に示します。

酸化物単結晶の新機能創製

(1) TSFZ法による酸化物高温超伝導体の高品質大形単結晶の育成
 1986年に発見された高温超伝導体の超伝導発現機構はかなり明らかにされてきていますが、未だに十分には解明されるに至っていません。高温超伝導体の超伝導発現機構を解明するためには、高品質の単結晶、最新鋭高性能の実験測定装置そして最高の測定技術が揃うことが必要とされています。そのうち、私たちの研究室では高品質単結晶育成を担当し、単結晶育成に有用な状態図の作成から単結晶育成までを系統的に研究しています。マスター・サンプルとなりうる良質単結晶を育成して、物性測定に関して最新型高性能の実験装置と最高の実験技術を有する国内外の研究機関に試料提供して共同研究を進めています。

LSCO

TSFZ法で育成したLa2-xSrxCuO4単結晶の写真

Temp. dependence of Resistivity

TSFZ法で育成したLa2-xSrxCuO4単結晶を用いて測定した抵抗率の温度依存性とその異方性

(2) 酸化物高温超伝導体単結晶膜の液相エピタキシャル成長
 酸化物高温超伝導体の高品質単結晶膜は、層状高温超伝導体単結晶に特有な低周波プラズマ励起を応用した超高速LSIデバイスへの実用化が期待されています。本部門では、La2-xSrxCuO4酸化物超伝導体の単結晶膜を液相エピタキシャル成長法により作製しています。

LMCO structure IIJ
La系銅酸化物超伝導体の構造と固有ジョセフソン接合の模式図

(3) 高温超伝導体薄膜作製用基板単結晶の探索と育成
 良質な高温超伝導体薄膜を作製するうえで、高温超伝導体との格子整合性がよく無双晶の基板結晶が求められています。超伝導体薄膜作製に適した基板結晶としてK2NiF4型構造やペロブスカイト型構造を有する複合酸化物やそれらに異種元素を置換した酸化物の単結晶をフローティングゾーン法により育成しています。

FZ-mirror

赤外線集中加熱の様子

(4) 新超伝導物質の探索および超伝導関連物質の単結晶育成
 酸化物高温用伝導体の元素置換や高温高圧処理による超伝導特性への効果を調べています。また、超伝導関連物質としてCuGeO3などの低次元系複合酸化物の単結晶を育成し、国内外の研究機関と共同研究してそれらの物性測定に関する研究を進めています。

3. 機能性化合物の単結晶育成

 フラックスと呼ばれる溶媒を用いた手法により機能性化合物の単結晶育成法を開発しています。これによって得られた単結晶を用いて、その化合物が持つ本来の物性を開拓し、材料研究を推進していきます。

育成結晶の一例

育成結晶の一例

TeO2系フラックスを用いて育成した酸化物高温超伝導体針状単結晶