研究内容
当研究室では、環境機能性無機化合物の単結晶育成と新機能の創製に関する研究を行っています。主にリチウムイオン伝導体・蛍光体・窒化物などの単結晶を育成し、環境・エネルギー問題の解決に貢献できる材料の開発を目指しています。新しい単結晶育成方法の開発にも取り組んでいます。
主な研究テーマ
・リチウムイオン伝導体の単結晶育成 -全固体リチウムイオン電池への応用-
・蛍光体単結晶の創製 -単結晶型白色 LED、室内植物育成用 LED への応用-
・新規誘電体の単結晶育成 -誘電体の基礎的研究-
・複合(酸)窒化物の新しい単結晶育成方法の開発 -新機能創製-
全単結晶リチウムイオン電池の創製を目指したリチウムイオン伝導体の単結晶育成
溶媒移動浮遊帯域溶融 (Traveling Solvent Floating Zone : TSFZ) 法を用いてリチウムイオン伝導体の単結晶を育成し精密な物性測定を行うことで、高いイオン伝導度を利用した高性能な全単結晶リチウムイオン電池の開発を目標に研究しています。結晶方位を制御した高いリチウムイオン伝導経路を形成させることによって電池性能の飛躍的な向上が期待できます。さらに、粒界抵抗のない単結晶を用いることで、多結晶粉末を用いた場合に生じる粒界抵抗によるイオン伝導度が低下する問題を解決することができます。
図1 リチウムイオン伝導体単結晶
単結晶型 LED 照明への応用を目指した蛍光体単結晶の育成
浮遊帯域溶融 (Floating Zone : FZ) 法または TSFZ 法を用いて蛍光体の単結晶を育成し、その蛍光特性を調べることで高輝度高演色性単結晶型白色 LED に適した蛍光体単結晶の創製や室内植物育成用赤色蛍光体単結晶の創製を目標に研究しています。高品質蛍光体単結晶を用いてその蛍光メカニズム解明に関する基礎的研究や単結晶の優れた熱伝導特性を利用して高出力が求められる照明用の蛍光体材料や高効率な植物育成用の蛍光体材料としての応用が期待できます。
新規誘電体の単結晶育成
層状構造において、2つ以上の酸素八面体回転モードからなる複雑な歪みによって副次的に分極が誘起され強誘電相に転移する機構は、従来のメカニズムとは異なり、強誘電体の設計において特定のカチオンの電子配置を考慮せずにすむため、元素選択の幅が大きく広がることから新規の強誘電体の開発が期待されています。精密な結晶構造解析や物性測定行うためには単結晶が重要であり、強誘電特性の発現メカニズムの解明を目標に新規誘電体の単結晶育成に関する研究しています。
複合(酸)窒化物の新しい単結晶育成方法の開発
複合(酸)窒化物は、耐環境性材料や機能性材料として期待されています。複合(酸)窒化物の単結晶育成が可能となれば、その単結晶を用いて基礎的物性を明らかにすることや様々な分野への応用展開が期待できます。しかし、複合(酸)窒化物は大気圧下では融解する前に分解するため、酸化物と同様の方法で単結晶を育成するのは一般的に困難です。そこで高圧窒素雰囲気下でレーザー光を利用した単結晶育成、窒素源となる低融点化合物を用いた溶媒からの結晶成長など新しい単結晶育成方法を開発して新機能の創製を目指して研究をしています。